松戸市立総合医療センターの経営危機が深刻化、令和8年度以降に現金枯渇の恐れ、抜本的経営再建へ
地域医療の要となっている松戸市立総合医療センターが、かつてない経営危機に直面しています。
8月22日の市議会全員協議会で示された経営再建方針によると、このまま推移すれば令和8年度以降に運営資金が底をつく可能性があり、市は緊急的な対策に乗り出すことになりました。
東葛北部医療圏で唯一の総合機能病院
まず理解しておきたいのは、市立総合医療センターの地域医療における重要性です。東葛北部保健医療圏の200床以上の救急告示病院13施設の中で、救命救急センター(成人・小児)、周産期母子医療センター、地域医療支援病院の機能をすべて備えているのは同センターだけという状況です。
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特に小児入院医療では、東葛北部医療圏での同センターのシェアは約59%に達しており、年間3,356人の0~9歳児が入院治療を受けています。
これは2位の東京慈恵医大附属柏病院の711人を大きく上回る数字で、地域の子どもたちの命を支える文字通り最後の砦となっています。
収支悪化の深刻な実態
令和6年度決算では、経常収支が前年比8.3億円悪化して41.2億円の赤字となりました。
主な要因は人件費の急激な増加で、令和4年度から令和6年度の間に給与費が25.4億円も増加し、人件費率は70.8%まで上昇しています。
人件費増加の内訳(18.1億円)
- 人事院勧告による昇給:5.7億円
- 東松戸病院閉院に伴う職員受け入れ:5.5億円
- 医師採用:1.5億円
- 会計年度任用職員勤勉手当:0.8億円
- その他:4.6億円
一方で収入面では、コロナ禍前の水準まで患者数が戻らず、一日平均入院患者数はコロナ禍前の495.8人から467.3人へと28.5人減少したままです。
経営再建への3つの柱
市は経営再建に向けて3つの基本方針を示しました。
1. 病床規模の適正化
現在約600床の病床数について、地域の医療需要を見極めながら適正規模を検討します。併せて、別棟建設計画についても外部環境の変化を踏まえて実施可否を検討するとしています。
2. 人件費の抑制
現在70.8%まで上昇した人件費率を、令和8年度には60%台前半まで引き下げることを目標とします。
3. 経営形態の見直し検討
独立行政法人化や民営化も選択肢として、最適な経営形態を検証していくとしています。
専門家チームによる抜本的見直し
8月1日に設置された経営再建プロジェクトチームには、病院事業管理者を筆頭に各部門長が参画。9月の補正予算成立後には、外部専門人材による実行支援も導入される予定です。
スケジュールとしては、令和8年3月までに具体的な経営再建策を含めた新たな経営計画を策定し、市議会への説明を行うことになっています。
政策医療継続への強い意志
経営危機とはいえ、市は政策医療の継続については明確な方針を示しています。
救急医療、周産期医療、小児医療、がん診療、災害医療など、民間病院では採算面で負担が大きい分野については、引き続き市立病院が担っていく考えです。
ただし、そのためには抜本的な経営体質の改善が不可欠という厳しい現実もあります。
「透明性」「スピード感」「チェック&バランス」を重視した新たなガバナンス体制の構築により、地域医療を守りながらも持続可能な経営基盤の確立を目指すことになります。
地域住民にとって欠かすことのできない医療インフラをどう維持していくのか。松戸市の医療政策は重要な局面を迎えています。
アクセス 松戸市立総合医療センター
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松戸市立総合医療センター 施設情報
- 松戸市立総合医療センター ホームページ
- 住所:千葉県松戸市千駄堀993-1
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