松戸市役所の移転計画が白紙に、新市長が方針大転換、現地建て替えも含め再検討へ
33億円もの大型投資で進んでいた松戸市役所の移転計画が大幅に方向転換する事となりました。
松戸隆政市長は8月22日、市議会で庁舎移転の白紙撤回を正式に表明。これまでの経緯を振り返ると、前市長時代には既に移転先の土地まで購入していただけに、大きな政策転換といえるでしょう。
前市長時代に決まっていた移転計画
振り返ってみると、前市長時代の昨年9月26日には市議会で補正予算が可決され、同月30日には松戸市岩瀬字相模台の国有地(約8,745平方メートル)を33億5千万円で購入する売買契約まで結んでいました。
当時は移転計画が既定路線として着実に進んでいたのです。
関連リンク:松戸市役所の移転計画が決まる、9/26(木)の市議会にて補正予算が可決、土地の売買契約が締結
しかし今年6月の市長選で、移転計画の見直しを公約に掲げた松戸市長が初当選。
選挙戦では「市民への説明が足りない」「建設コストが膨らみすぎている」「現地での建て替えを望む声も多い」「移転先周辺の渋滞が心配」といった理由から、計画の抜本的な見直しを訴えていました。
専門家による客観的な再検証
新たに設置される検討チームの特徴は、利害関係のない外部専門家で構成される点です。
建築や都市計画の大学教授、シンクタンクの研究員、政策投資銀行の担当者、経済アナリスト、国交省の研究職員などが参加予定で、条例に基づく正式な審議会ではなく、懇談会形式で運営されます。
検討内容は移転案と現地建て替え案の徹底比較。建設費用、工事期間、市民の利便性など多角的に分析し、年度内には結論を出してもらう予定です。
市民からの意見聴取も並行して行い、最終的には市議会との協議を経て建設場所を決定する流れになっています。
緊急課題となった仮庁舎への移転
一方で待ったなしの課題となっているのが、耐震性に問題がある現庁舎からの退避です。
本館(約3,683平方メートル)と新館(約11,894平方メートル)の機能を、令和9年3月末までに松戸駅周辺の民間ビルに移さなければなりません。
候補となっているのは松戸ビルヂングの事務所棟と商業棟、都市綜合開発第3ビルなど。市民サービスの窓口はできるだけ一箇所に集約し、関連部署も近くに配置して利便性の低下を防ぐ方針です。
ただし賃料や改修費用など新たなコストも発生するため、財政面での検討も欠かせません。
市民参加を重視した進め方に
今回の方針転換で最も注目されるのは、市民への情報提供と意見聴取を重視する姿勢です。前市長時代の進め方に対する反省から、プロセスの透明性を高めることを重視しています。
「市民や議員に分かりやすい形で情報を提供し、意見を聞きながら進める」という市長の発言からも、従来とは異なるアプローチを目指していることがうかがえます。
課題山積の船出
とはいえ、課題も山積しています。既に購入した33億円の土地をどう活用するのか、仮庁舎移転に伴う追加コストはどの程度になるのか、新庁舎の完成時期はさらに遅れるのか。課題は決して少なくありません。
また、専門家チームの検討結果と市民意見が食い違った場合の判断基準や、年度内という短期間での結論導出が現実的かどうかも注目ポイントです。
市民にとって本当に使いやすい庁舎はどこにあるべきなのか。松戸市政の大きな分岐点となる今回の決定プロセスから、しばらく目が離せそうにありません。
